
静かなる嵐の予兆
尚文たちの活躍によって一時の平穏を得た世界。
新たな拠点となった村では、ラフタリアやフィーロ、そしてリーシアたちと共に、温かな日常が流れていました。
畑を耕し、子どもたちと触れ合い、笑い声が満ちる日々。
尚文の胸にも、久しぶりに穏やかな感情が芽生えはじめていました。
けれど――。
異世界において「平和」とは、あまりに儚いもの。
それは、ただ静かに、次なる嵐の前触れに過ぎなかったのです。
異変の報せは、突然に。
巨大な魔物が封じられていた「霊亀」の異変。
そして、他の三勇者たちの失踪――。
尚文たちは、再び剣を手に立ち上がる運命に導かれていきます。
新たな使命と、すれ違う心
霊亀の目覚めは、この世界を滅ぼしかねない大災厄。
本来なら四聖勇者が力を合わせるべき局面――けれど、剣・弓・槍の勇者たちは音信不通。
国王や女王も苦悩し、尚文に打開策を託すしかない状況へと追い込まれていきます。
尚文は、ただ自分にできることを果たす決意をします。
仲間たちも彼を支えるため、一緒に前へと歩みだします。
しかし、それはまた、別れを覚悟する旅でもありました。
リーシアは、自らの無力さに苦悩しながらも、尚文に並び立つ存在になるために強くあろうとします。
ラフタリアもまた、尚文の隣にいるために、剣を磨き続けます。
そしてフィーロ――。
彼女の無邪気な笑顔は、尚文たちにとってかけがえのない癒しであり、希望そのものでした。
それぞれが抱える想い。
交差する決意。
けれど、その想いは時にすれ違い、不安や痛みをも呼び起こしていきます。
動き出す絶望、霊亀の脅威
尚文たちは、情報を集め、対策を練り、少しずつ霊亀討伐に向けた体制を整えていきます。
しかし、霊亀が放つ魔物たちの襲撃は激しさを増し、村や都市を容赦なく飲み込んでいきます。
人々の恐怖と絶望が、世界を覆い始めます。
尚文たちは戦いながらも、守りきれないものの多さに胸を痛めます。
けれど、それでも彼らは立ち止まりません。
霊亀討伐への鍵を握るのは、「心臓」と呼ばれる存在。
それに辿り着くためには、絶望的な戦力差を乗り越えねばならない――。
そして、物語の核心へと近づく中で、尚文たちは「オスト=ホウライ」と名乗る謎の女性と出会います。
美しく、気高く、そしてどこか哀しみを秘めた彼女。
彼女との出会いは、尚文たちの運命に大きな波紋を広げていくのでした。
新たな旅路、深まる絆
14巻のラスト、尚文たちは再び厳しい選択を迫られます。
ただ敵を倒せばよいわけではない。
守るべきものがあり、守れなかったものに悔やみを抱きながら、それでも前へ進むしかない。
ラフタリアの手の温もり。
リーシアの涙ながらの微笑み。
フィーロの小さな羽ばたき。
それらすべてが尚文にとって、戦う理由であり、支えであり、希望そのものでした。
異世界で背負った重すぎる使命。
それを「共に背負いたい」と願う仲間たちの存在。
尚文は、誰よりも強く、誰よりも優しい盾として、再び立ち上がります。
大きな悲しみと、それを乗り越える強さを描きながら、
第14巻は、新たな物語の地平へと読者を誘います。
これから尚文たちがどんな未来を切り開くのか――。
その行く末を、ぜひその目で見届けてください。
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