ワンパンマン 4巻 (ジャンプコミックス)

Kindle版（電子書籍）

コミック（紙）

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どんな敵もたった一撃で倒してしまう、最強のヒーロー・サイタマ。
力を持ちながらも評価されず、地味なC級ヒーローとして日々を過ごす彼。
しかし第4巻では、そんな彼の前に、これまでとはまったく違う“災厄”が立ちはだかる。
人類滅亡を目論む地底人、そして海の覇者「深海王」。

街を守るヒーローたちが次々と倒れていく中、
サイタマの心に芽生えたのは、“本当に戦う理由”——。
無敵の力を持つ男の、孤独でまっすぐな戦いが、ここから動き出す。

物語の冒頭を飾るのは、地底から現れた怪人軍団との戦い。
「地上の支配を奪う」と宣言する地底王の軍勢は、瞬く間に街を混乱に陥れる。
だが、そんな中でただ一人、退屈そうに目を覚ます男がいた——サイタマだ。

強敵を前に久しぶりに胸を高鳴らせる彼。
夢のような激闘が繰り広げられる……と思いきや、それはまさかの夢オチ。
この展開が、作品のユーモアとサイタマの「強すぎるがゆえの悲哀」を一瞬で描き出す。

力を求めていた頃の熱狂はもうなく、どんな敵も簡単に消し飛ばしてしまう現実。
そんな虚しさの中で、サイタマが感じていたのは「強くなりすぎた代償」だった。
だが、この静かな空白の時間が、次なる試練の前触れとなる——。

舞台は突然、激しい嵐の夜へ。
港町に出現したのは、人類の天敵とも言える怪人「深海王」。
屈強な肉体と圧倒的な力を誇り、S級に迫るヒーローたちを次々と粉砕していく。
この巻では、彼の存在が“ヒーローの本質”を容赦なく暴き出す。

深海王の前に、ヒーロー協会所属の戦士たちが立ち向かう。
ジェノス、イナズマックス、スネック、さらにはA級ヒーロー・スティンガーなどが登場。
それぞれが必死に戦い、誰かを守ろうとする姿が描かれるが、
深海王の圧倒的な暴力の前に、その努力は無残に打ち砕かれていく。

彼らの苦悩、恐怖、そして決意。
どんなに無様でも、人々を守るために立ち上がる姿が胸を熱くする。
ヒーローは、勝つために戦うのではなく、「負けると分かっていても戦う存在」。
その真の意味を、深海王編は丁寧に描き出していく。

そして、満身創痍のジェノスが立ち上がるシーン。
サイタマの弟子として、自分の限界を超えようとする姿には胸が締め付けられる。
ボロボロになりながらも、守るべきもののために立ち続ける——。
彼の戦いは、まさに“ヒーローの誇り”そのものだ。

深海王の猛威が頂点に達したその瞬間、
嵐の中を歩いてくるひとりの男——サイタマ。
派手な登場もなければ、威圧感もない。
ただ、いつもと同じように無表情で現れる。

市民たちは「C級の下っ端ヒーローが来ても無駄だ」と嘲笑する。
しかし、誰よりも静かに、誰よりも真っ直ぐに、サイタマは敵を見据える。

深海王の拳が炸裂し、圧倒的な威圧が空気を支配する中、
サイタマの拳が放たれる——それは、たった一撃。
嵐を切り裂き、街を救うその拳は、言葉を超えた“ヒーローの証”だった。

だが、彼は戦いのあと、自分の功績をわざと他のヒーローのものにする。
倒された怪人を前に、彼は冗談のように笑って言う。
「たまたま弱いやつだったんだろ」
そう言って、世間の賞賛も名誉も、すべて他者に譲る。

その優しさと誇りに、ジェノスは何も言えずにただ見つめる。
サイタマはいつだって、誰よりも強く、そして誰よりも謙虚なヒーローなのだ。

「ワンパンマン」第4巻は、シリーズの中でも屈指の名エピソードを収録している。
深海王との戦いは、ヒーローとは何かを改めて問いかける。
それは名声でも、称賛でもなく——ただ「誰かを救うために立つ心」。

人々に誤解されても、批判されても、
サイタマは笑って「ヒーローだから」と言える。
その潔さと優しさが、読む者の心を掴んで離さない。

そして、戦いの後に見える市民たちの反応。
誰かが犠牲になった現実を受け止めながらも、
ヒーローたちが確かに“誰かの希望”であったことを描く。

ジェノスのまっすぐな忠誠、サイタマの静かな強さ、
そして市民たちの揺れる心。
それらが織りなすドラマが、この巻に凝縮されている。

最後のページを閉じるとき、
あなたの胸にはきっと、ひとつの想いが残るはず。
——「ヒーローって、こういうものなんだ」と。

地底から、海から、あらゆる脅威が現れるこの世界で、
サイタマは今日も静かに立っている。
誰にも褒められなくても、誰にも知られなくても、
その一撃は、確かに人々を救っている。

笑いと涙、そして静かな感動が詰まった「ワンパンマン」第4巻。
強さの裏にある優しさに、きっと心を奪われる。